相続手続の流れ ~死亡届や遺産分割協議、財産の名義変更や相続税の申告など~
家族・親族の方が亡くなると、ご自身に関わる相続が開始されます。相続手続は死亡届の提出から始まり、その後相続人の調査や遺産の調査、遺産分割協議と進んでいきます。
一定額以上の遺産がある場合には相続税の申告も必要となりますので、これらの手続を法定の期限までに進めなくてはなりません。
また、遺産分割協議を進めるためには相続人が確定できている必要があるなど、連動している手続もあります。
そこで問題なく相続手続を進めていくためには、全体の流れを把握しておくことが大切です。この記事では相続開始直後から相続人等が進めるべき手続の内容の全体像を示し、押さえておきたいポイントについて解説をしていきます。
死亡から7日以内に死亡届を提出
まずは「死亡届」を提出しなければなりません。この死亡届の提出は、次のように、法的な義務として定められています。
死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知った日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
戸籍法で規定されているように、死亡届の提出期限は“死亡の事実を知った日から7日以内”が原則です。
亡くなってから1週間以内に済ませるべき手続であると覚えておきましょう。
同居人に提出義務が課される
死亡届の提出義務が課される「届出義務者」については同法第87条に規定が置かれています。
次の者は、その順序に従って、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
つまり、一緒に住んでいる方に死亡届を提出する義務が課されるということです。また、意外に思われるかもしれませんが、同居人がいない場合には家主や地主などにも死亡届の提出義務が課されます。
さらに同条第2項では、上の届出義務者以外にも、その他親族や後見人等も死亡届を“提出することができる”と規定しています。これらの人物の場合、提出する義務ではなく、提出する権利が与えられています。
死亡届を作成して市区町村役場に提出
死亡届の用紙は市町村役場で入手できます。
また、法務省のWebページから内容を確認することもできます。こちらのページでは死亡届の書き方についても例を挙げて紹介されています。
作成方法等についてわからないことがある、不安があるという方は、司法書士や弁護士などに相談するようにしましょう。
なお作成した死亡届は、①亡くなられた場所、②亡くなられた方の本籍地、③届出人の所在地のいずれかの市区町村役場で提出することができます。
相続の承認・放棄の判断をする
相続をすると、被相続人(亡くなられた方)の資産が受け取れるだけでなく、権利義務関係も引く継ぐことになります。
簡単にいうと、借金なども取得することになります。
そして相続は義務ではありませんので、これを拒否することもできます。
もし借金の存在が明らかであり、その大きさが資産を上回っているのであれば、「相続放棄」をすることも検討すべきでしょう。
ただ、相続人に十分な資産があり多少の借金を肩代わりしてでも被相続人の財産が欲しいという場合には、「単純承認」として相続を受け入れることも選択肢に入ってくるかもしれません。
単純承認をする場合特に行うべき手続はありません。別途行動を起こす必要があるのは相続放棄をする場合、または「限定承認」をする場合です。
限定承認は、“プラスの相続財産の限度でマイナスの相続財産も承継する”という相続の承認方法です。
相続承認後のリスクを減らすことができますが、相続人全員で限定承認をしなければならないためハードルが高いです。
この限定承認、そして相続放棄をするには、家庭裁判所で手続を行う必要があります。
遺産分割協議とその準備を進める
相続人が複数いる場合、遺産を分け合うことになります。民法には法定相続分として各人の取り分が一応規定されていますが、当事者らで話し合って自由に分け合うことも可能です。
ただ、実際に協議を始める前にはしておかなくてはならないこともあります。
戸籍をチェックして相続人を確定させる
家族で勝手に遺産分割協議を進めてはいけません。
遺産分割協議は相続人全員の意見を反映させなければならず、相続人は家族に限らずなることができます。
具体的には、被相続人の配偶者や子、親、祖父母、兄弟姉妹などが相続権を得る可能性があります。
また、本来相続人になるはずであった子がすでに亡くなっているときには、代襲相続によりさらにその子が相続権を得ることとなり、後順位に位置する親や兄弟姉妹などは相続することができなくなります。
たとえ兄弟姉妹や親が同居をしていても、それだけで相続人になれるわけではありません。
誰が相続人になるのか、これを確定させるために“戸籍の調査”を進めていきます。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を集めることで相続人を確定させていくのです。
戸籍をチェックせず、推測だけで相続人を決めつけないように注意しましょう。
遺産分割協議書を作成する
相続人が明らかとなれば、その全員で遺産分割協議を行いましょう。
なお全員の同意を得ることが重要なのであり、必ずしも全員が一堂に会して直接話し合いを行う必要はありません。同意の意思表示を示せればそれでかまいませんし、Web会議で話し合いに参加するのでも問題ありません。
ただ、協議内容を書面に残すことは必要です。
これがなくても協議は無効となりませんが、トラブルを避けるため、そして後続の手続をスムーズにするためにも、書面として遺産分割協議書は作成しておくべきです。
書面がない場合、「言った・言わない」の問題が生じ、相続人間で揉めるおそれがあります。また、名義変更の際に証明資料として遺産分割協議書の提出を求められることもありますので、必ず作成しておきます。
ミスなく確実に書面化するためにも、法律を生業とする専門家に依頼して作成をしてもらうことも検討しましょう。
取得した財産の名義変更を行う
預金を引き継ぐ場合、銀行等の金融機関で名義変更の手続を行う必要があります。
死亡届や通帳・キャッシュカード、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などを準備して、窓口で手続を行います。
その他、株式を取得したときには信託銀行や証券会社、自動車を取得したときには陸運事務所にて、必要書類とともに手続を行うことになります。
不動産を取得したときは登記申請が必要
不動産を取得したときには名義変更として所有権移転登記の申請を行うことになります。
他の財産に比べて高額である傾向にありますので、その権利を守るために、早いうちに登記手続を済ませておくべきです。
登記申請では「登記申請書」の作成のほか、次のような書類を準備しなくてはなりません。
- 不動産の登記事項証明書と固定資産税の評価証明書
- 遺産分割協議書
- 住民票
- 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍附票)
遺言に基づいて不動産を取得したのであれば、遺言書も準備します。
必要書類が準備できるのは基本的に平日の昼間です。働きながら、役所や店舗に出向いてすべての書類を集めるのは大変な作業ですし、登記申請に関しては登記のプロである司法書士に任せると良いです。
相続開始から10ヶ月以内に相続税申告
遺産を取得して終わり、とはなりません。
取得した財産の価額に応じて相続税の申告および納税の義務が課されます。
遺産の総額が基礎控除額(3,000万円以上)を下回る場合には、基本的に申告の必要はありません。基礎控除額を上回る場合でも各人利用できる控除により納税額がゼロになることもありますが、申告手続は必要になることがありますので要注意です。
例えば配偶者控除を適用すれば納税額はゼロにまで下げやすいですが、当該控除を適用する旨申告する必要があるのです。
その他相続税の詳細に関しては税理士に相談すると良いでしょう。
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平成10年 早稲田大学 法学部卒業
平成12年 司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務
平成14年 司法書士登録
平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
事務所概要
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