任意後見を始めるには2段階の手続きが必要|契約や申し立ての流れ、費用を解説
任意後見制度を利用する際の流れは、大きく2つの段階に分けられます。第1段階は「任意後見契約の締結」、第2段階は「任意後見の開始」です。それぞれの段階について詳しく説明するとともに、任意後見のために必要な費用についても解説します。
任意後見契約の締結の流れ
任意後見を始めるには、前もって契約を締結していないといけません。この準備段階における手続きの流れをまずは確認しておきましょう。
任意後見人になってくれる方を探す
本人が信頼できる人物から、「任意後見人※」になってくれる方を探しましょう。選択肢としては以下の者が挙げられます。
※実際に任意後見が始まるまでは「任意後見受任者」と呼ばれる。
- 家族や親族
- 信頼できる友人や知人
- 司法書士、行政書士、弁護士などの専門家
- その他の第三者(法人も可能)
任意後見人となるのに特別な資格は不要ですが、後見人としての仕事を全うできる方、法的な知識や財産管理の能力がある方を選ぶべきです。また、加齢に伴う判断能力の衰えが心配で任意後見を始めようとしているのであれば、本人より年齢の若い方を選んだ方が良いでしょう。ただし、未成年者を指定することはできません。
任意後見で頼みたい内容の決定
本人と任意後見受任者で、将来判断能力が低下したときにどのような支援を受けたいかという点について詳しく話し合います。そして以下の項目についてルールを整理していきます。
検討する項目 | 詳細・具体例 |
---|---|
財産管理に関する事項 | ・年金や家賃などの収入の受領 ・公共料金や税金などの支払い ・生活費の管理 ・口座の管理(振込や払戻しなど) ・不動産や株式などの資産管理 など |
身上監護に関する事項 | ・入院などの医療に関する手続き ・介護サービスを利用するための手続き ・生活必需品の購入や公共サービスの利用手続き ・住居に関する手続き など |
任意後見人の報酬 | ・月額報酬の設定 ・報酬の支払い時期と方法 ・不動産売却など特別な仕事が発生した場合の追加報酬 など ※任意後見人受任者の同意があれば無報酬とすることも可能。 |
その他の特記事項 | ・任意後見の開始条件(医師の診断結果など) ・任意後見人を複数選任する場合、各自の役割分担 ・任意後見契約の変更・解除の条件 など |
これは契約内容に直結しますので、司法書士など後見制度に精通した専門家のサポートも受けながら検討を進めていくことをおすすめします。
公証役場で任意後見契約書を作成
依頼内容が定まれば、その内容を契約書にまとめます。任意後見契約に関しては公正証書として作成すべきことが法律上求められていますので、公証役場にて作成手続きを進めましょう。
基本的には次の流れに沿って進行します。
- 公証役場に連絡する
- 公証人との打ち合わせを通じて必要書類や手続きの詳細を確認する
- 本人と任意後見受任者が公証役場に出向いて任意後見契約を締結。公証人が契約内容を確認し、最終的な契約書(公正証書)を完成させる。
任意後見契約に関する登記
任意後見契約の公正証書を作成した後で、公証人が登記所に対し登記の嘱託をします。登記は必須ですが、契約当事者が登記申請に対応する必要はなく、公証人の嘱託により任意後見契約に関する登記が行われます。
なお、登記には本人や任意後見受任者の情報などが登録されます。
任意後見の開始の流れ
以上で準備段階が終わりますので、続いて実際に任意後見が開始される際の手続きについて紹介していきます。
本人の判断能力が低下
本人の判断能力が低下したことを受けて、任意後見を開始する必要が生じます。この判断は通常、以下のような状況で行われます。
- 認知症が進行した
- 精神障害の発症や悪化
- 重度の身体障害により意思疎通が困難になった
任意後見監督人選任の申し立て
任意後見契約は締結していますが、本人の判断能力の低下を受けて即座に効力が生じるわけではありません。任意後見を始めるには、家庭裁判所に「任意後見監督人※」を選任してもらう必要があるのです。
※任意後見監督人とは、任意後見人の活動状況をチェックし、適切に職務を遂行しているかどうかを家庭裁判所に報告する職務を担う存在。
そこで申し立ての手続きを行います。
- 申立人:本人、配偶者、4親等以内の親族、任意後見受任者、のいずれか
- 申立先:本人の住所地を管轄する家庭裁判所
- 必要書類:任意後見監督人選任申立書のほか、以下の書類を準備する。
- 本人の戸籍謄本、住民票
- 任意後見契約公正証書の謄本
- 判断能力の低下を示す診断書
- 財産目録や収支予定表
ほかにも家庭裁判所から書類を提出するよう求められることがあります。
家庭裁判所による審理・選任
申し立てを受けた家裁判所が提出された資料を確認し、審理を行います。その際、本人の判断能力の程度などを鑑みて任意後見開始の必要性が検討されます。場合によっては本人やその他身近な方への聞き取り調査が実施されることもあります。
問題なければ、任意後見監督人が選任されます。一般的には司法書士や弁護士などの専門家が選任され、その結果が関係者へ通知されます。
任意後見の開始
任意後見監督人の選任を受け、任意後見契約に基づく任意後見が正式にスタートします。
任意後見人は後見事務を開始し、まずは財産目録を作成します。その後も年1回程度、定期的に任意後見監督人に対して状況の報告を行うことになります。
任意後見制度の活用にかかる費用
任意後見制度を活用するには費用が必要です。①任意後見契約締結の準備段階、そして②家庭裁判所へ申し立てて任意後見を始める段階、さらにその後の③任意後見制度に基づく支援を受ける段階それぞれで費用の負担が生じます。
①任意後見契約締結の準備段階で発生する費用 | |
---|---|
公正証書作成手数料 | ※ |
登記嘱託手数料 | 1,400円 |
登記所に納付する印紙代 | 2,600円 |
その他 | ・郵便切手代(家庭裁判所により異なる) ・正本、謄本の作成手数料(1枚につき250円) ・公証人の出張を依頼するときは日当と交通費も発生する |
※契約によって異なりますので、こちらの費用に関してはお問い合わせください
②任意後見を始める段階で発生する費用 | |
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申立手数料 | 800円 |
登記嘱託手数料 | 1,400円 |
その他 | ・診断書作成費用(病院により異なる) ・郵便切手代(家庭裁判所により異なる) ・家庭裁判所から求められたときは鑑定費用も発生する。10万円~20万円程度が目安。 |
③任意後見制度に基づく支援を受ける段階で発生する費用 | |
---|---|
任意後見人に対する報酬 | ・親族が任意後見人の場合 0~3万円程度(月額) ・専門家(司法書士など)が任意後見人の場合 3~5万円程度(月額) ※任意後見契約により定める。 |
任意後見監督人に対する報酬 | 1,2万円程度(月額)。 ※管理財産の額が大きい場合や財産の種別が多く複雑な場合は月額2,3万円あるいはそれ以上かかることもある。 ※家庭裁判所が定める。 |
報酬の支払いが続くことも念頭に、任意後見制度の活用について検討を進めましょう。
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平成10年 早稲田大学 法学部卒業
平成12年 司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務
平成14年 司法書士登録
平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
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事務所名 | いつき司法書士事務所 |
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