成年後見制度の利用にかかる費用|申立手数料や後見人等への報酬額について
判断能力が衰えた方の意思決定を支援する「成年後見制度」は、本人を法的に保護するうえで有効な制度です。しかしその保護の対象となるにはいくらかの費用が必要で、保護を受け続けるにも後見事務を担う方への報酬が必要となります。
そのため成年後見制度の利用を検討する際は、その制度の仕組みについて理解するだけでなく、費用の大きさについても理解しておくことが重要といえます。
法定後見(後見・保佐・補助)を利用するときの費用
すでに本人の判断能力が衰えている場合は「法定後見」の利用を検討します。
法定後見には後見・保佐・補助の3種があり、それぞれ後見人等に与えられる権限が異なります。代理権や同意権の範囲を広げるときは費用が加算されますし、状況によって金額が変わってくることは留意しなくてはなりませんが、おおむね以下に紹介する費用が発生してきます。
申し立て手数料
申し立て手数料として800円(収入印紙)が発生します。
なお、法定後見の申し立てにあたっては本人の住民票がある住所地を管轄とする家庭裁判所が窓口となります。
※実際の住所地と住民票を置いてある住所地が異なるときは、実際に生活をしている場所を基準に考えるケースもある。
※法定後見の申立権を持つのは本人・配偶者・四親等内の親族などであるが、法律により市区町村長にも申立権が認められている。市区町村長が申し立てできるのは“本人の福祉を図るため特に必要があると認められる場合”。
後見等登記手数料
後見等に関する登記に、手数料として2,600円(収入印紙)がかかります。
後見等を始めるときはその旨を公示する必要があり、この公示は登記により行うところ、不動産登記などとは異なり成年後見制度においては本人が直接手続きを行いません。この手続きを嘱託することになりますので、その分を手数料として支払うこととなるのです。
郵便切手代
郵便切手代として数千円(おおむね3,000円~5,000円程度)が発生します。
家庭裁判所が登記の嘱託をしたり後見等開始に係る審判書を送ったりするのに郵便切手が使われますので、その費用を納めることになります。
鑑定費用
医師による鑑定に10万円~20万円ほどの費用がかかることもあります。
法定後見の申し立てにあたっては、「親族の同意書」や「財産目録」、「収支予定表」、そして「診断書」も必要となります。この診断書の提出をしておけば鑑定が不要となるケースもありますが、後見や保佐においては原則として鑑定が行われる運用になっていますので、鑑定費用についてもかかるものと考えておきましょう。
後見人等への報酬
本人の代わりに法律行為を行ったり財産管理をしたりする後見人等には報酬が必要です。具体的な額については、本人の資力やその他の事情を考慮して家庭裁判所が決定するルールになっています。
報酬の種類 | 発生するケース | 目安額 |
---|---|---|
基本報酬 | 通常の後見業務を行った | 月額2万円 |
特に資産が高額 | 管理額が~5,000万円: 管理額が5,000万円超: | |
付加報酬 | 身上監護に特別困難な事情がある | 基本報酬の50%以下から相当な額を追加 |
示談交渉や訴訟対応、遺産分割協議、不動産の売却、施設の入所契約など特別の行為をした | 相当額の報酬を追加 | |
監督人への報酬 | ― | 後見人等の半額 |
実際のところは、後見人等が行う職務に関する報告に基づいて報酬が請求される場合が多いです。
後見人等への報酬が支払えない場合の対処法
申し立てをするときは、鑑定にある程度まとまったお金が必要となりますが、その他については低廉な金額が設定されていますので大きな問題となる可能性は低いでしょう。
一方で後見人等への報酬は毎月発生するもので、基本的には一生続くこととなります。本人の財産から捻出しないといけませんが、その本人にほとんど財産がなく月々の収支もプラスになっていないときは、後見人等が報酬を受け取ることができません。
そうなると同制度により支援を受けることができなくなってしまいます。
そこで、費用の捻出が難しいときは、自治体による助成金やその他団体による補助が利用できないか探してみましょう。
自治体によっては、後見人等への報酬の支払いが難しい場合、上限額を設けたうえで助成を認めているケースもありますし、助成金制度を運用している法人がいたりもします。
任意後見を利用するときの費用
本人が成年後見制度について理解し、契約を締結できるだけの判断能力が残っているのなら、「任意後見」の利用も視野に入れることができます。
任意後見においても家庭裁判所への申し立てが必要で、法定後見同様に「申し立て手数料」「登記手数料」「郵便切手代」が発生し、金額にも大差はありません。
ただし、家庭裁判所への申し立てより前に任意後見受任者と契約を交わさないといけません。任意後見契約については、公正証書によって任意後見人が代理権を行使する範囲を特定して締結しなければなりませんので、公正証書の作成費用が次の通りに発生します。
《 任意後見契約書(公正証書)の作成にかかる費用 》
- 公証人に支払う手数料・・・11,000円
- 証書の枚数が4枚を超えると1枚あたり250円加算。
- 病床にて証書を作成するときは通常費用の50%を加算。
- 登記手数料としての収入印紙代・・・2,600円
- 登記嘱託の手数料・・・1,400円
- 正本や謄本の作成手数料・・・1枚あたり250円
- 出張作成を依頼する場合・・・1日につき2万円+出張の実費
もう1つ押さえておきたいのが「任意後見においては任意後見監督人が必須である」という点です。
家庭裁判所への申し立ては、任意後見監督人を選任してもらうための申し立てであり、任意後見人に加えこの監督人への報酬の負担もかかってきます。
一般的には月額1,2万円程度で設定されることが多いですが、費用の総額は法定後見と比べて高額になりやすく、この支払いを続けられる資力がなければ任意後見制度の利用は難しいでしょう。
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平成10年 早稲田大学 法学部卒業
平成12年 司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務
平成14年 司法書士登録
平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
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