公正証書遺言について~効力や特徴、自筆証書遺言との違い~
遺言に法的効力を持たせるには正しい方式で書面を作成しないといけません。
ただし作成方法は1つではなく、「公正証書遺言」や「自筆証書遺言」などの種類を遺言者は選択することができます。
記載できる遺言に違いはありませんが、遺言書の有効性について争いが起こる可能性なども考慮して選ぶことが大事です。
そこで当記事では代表的な上記2種の遺言書につき比較検討ができるよう、特に公正証書遺言へ焦点を当てて解説をしていきます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、「公証人に遺言内容を伝えて遺言書を作成してもらう」ときの遺言書です。
そのため遺言者が1人で作成することはできず、公証役場で手続を進めていかなくてはなりません。
さらには証人を2人用意する必要もあり、作成にかかる手間や時間を考えると遺言者には比較的大きな負担がかかる遺言書といえるでしょう。
しかしその分安心感もあります。法律に詳しくない方が1人で作成したのでは不備が含まれているリスクも高くなり、本人としても不安が残るでしょう。
また公証人は実質公務員であることから、公証人の作成する公正証書遺言も「公文書」として成立します。
公正証書遺言の効力や特徴
公正証書遺言の効力や特徴は、次のように整理できます。
無効になるリスクが小さい | 遺言書は厳格に定められた方式に従って作成されなければ無効になってしまうが、公証人という法律のプロが対応することでそのリスクを下げられる。 |
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破棄や隠匿の危険がない | 公正証書遺言は公文書として原本が公証役場に保管される。そのため第三者による破棄・隠匿などの被害に遭う危険がなく、安全に保管し続けられる。 |
相続開始後の検認が不要 | 相続開始後、遺言書は原則として検認を受けなければならない。家庭裁判所での検認を経て、遺言書の内容を保全する必要がある。しかし公正証書遺言においては原本が公証役場で保管されていることから検認が不要になっている。 |
公正証書遺言も無効になることはある
公正証書遺言は無効になりにくく高い証拠力を持ちますが、無効にならないことが保障されるわけではありません。
例えば後になって「遺言者には作成時点で遺言能力がなかった」と主張され、その事実が認められると遺言書は無効になります。
公証人が遺言能力についてもチェックするためこのような事態が起こる危険性はかなり低いと思われますが、可能性はゼロではありません。
また、公正証書遺言作成の背景に、第三者による脅迫や詐欺があるときも無効となります。こちらに関しては公証人が見抜くのも簡単ではありません。
きちんと受け答えができており、脅迫や詐欺を疑わせるような言動がなければそのまま公正証書遺言が作成できてしまいます。
自筆証書遺言との比較
自筆証書遺言は、「遺言者の自書により作成する遺言書」のことです。
作成方法は公正証書遺言と異なりますが、どちらも遺言書であることに変わりはありません。
どちらも有効であるならば、相続分の指定や相続権の指定、遺産分割の制限、遺言執行者の指定などができる点も同じです。
例えば「土地〇〇を△△に相続させる」という記載があるとき、その書面が公正証書遺言であっても自筆証書遺言であっても、当然そこから生じる効力が変わることはありません。
遺留分侵害額請求を受ける可能性がある点でも変わりありません。公正証書遺言を使ったとしても遺留分制度の適用を受けなくなることはありません。
※遺留分とは特定の相続人に最低限留保される遺産のこと。
遺留分相当すら取得できなかったとき、受遺者等に対して遺留分権利者は金銭の請求(遺留分侵害額請求)をすることができる。
そこで両者の違いは主に①作成手続・②トラブルが起こるリスク、の2点に分けることができます。
| 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 |
---|---|---|
作成手続 | ・事前にアポを取って、公証役場に出向いて作成する必要がある。証人も必要。 ・公証人手数料も数千円、数万円以上発生する。 | ・遺言者が遺言を自筆する。 ・費用は不要。 |
トラブルの起こるリスク | ・形式不備による無効のリスクが低い。 ・公証役場で原本が保管されて改ざんや紛失等のリスクが低い。 | ・形式不備による無効のリスクがある。 ・遺言者の自己責任で保管するため改ざんや紛失等のリスクがある。 |
なお、自筆証書遺言に関しては法務局による保管サービスも始まりましたので、そちらを利用すれば保管に関する問題は回避しやすくなります。
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平成10年 早稲田大学 法学部卒業
平成12年 司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務
平成14年 司法書士登録
平成16年 簡裁代理関係業務認定
平成22年 いつき司法書士事務所開業
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