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包括遺贈についての解説| 遺贈とは何か、特定遺贈との違いや特徴など

亡くなった方の財産は基本的に一定の身分関係を持つ相続人が取得しますが、遺言書を作成すれば第三者へ譲渡することも可能です。

この遺贈にはさらに種類があり、特定の財産を指定してする遺贈と取得割合を定めてする遺贈があります。

 

それぞれに特徴が異なりますので、相続対策を取るときは遺贈の仕組みについても知っておくことが大切です。

ここで遺贈、とりわけ包括遺贈について解説をしていきますのでぜひ参考にしてください。

遺贈とは

遺贈とは遺言で財産を与える行為を意味します。そして遺言に法的拘束力を持たせるには「遺言書の作成」という形式的な要件を満たす必要がありますので、遺贈を行ううえで遺言書は欠かすことのできない重要なツールであると説明できます。

包括遺贈と特定遺贈

遺贈は「特定遺贈」と「包括遺贈」にわけることができます。

 

特定遺贈は各財産に着目して、譲渡する物を指定して行うときの遺贈を指します。例えば代々引き継がれてきた土地を長男に取得してもらいたいと願うのであれば、遺言書に「土地〇〇を長男に遺贈する」などと記載する必要があります。このときの遺贈は特定遺贈となり、言及された財産についてのみ効力が生じます。「預金2,000万円を妻に遺贈する」などと記載したときの遺贈についても同様です。

 

包括遺贈は財産個別に着目するのではなく、相続分を譲渡するときの遺贈ともいえます。例えば特段渡すべき財産があるわけではないものの一定割合を取得してもらいたいときは、「全財産のうち3割を遺贈する」などと記載します。このときの遺贈は包括遺贈となり、その指定された範囲内(この例だと3割)で、相続分を取得したことになります。「財産のすべてを遺贈する」と記載したときの遺贈についても同様です。

包括遺贈の特徴

包括遺贈は単に財産を与える行為ではなく、相続人としての権限を一部与える行為にあたります。

そのため良い点もあれば注意すべき点もあり、遺言書を作成する方はその効力についてよく理解した上で遺言内容を考えなくてはなりません。

 

以下で具体的な特徴を見ていきましょう。

受遺者は遺産分割協議に参加する

包括遺贈をされた受遺者は、その割合で相続人同等の権限を得ます。

 

包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

引用:e-Gov法令検索 民法第990

 

法定相続人については民法に規定が置かれており、被相続人でも自由にその人選をしたり範囲を広げたりすることはできません。

しかしこの包括遺贈の仕組みを活用すれば、実質相続人の範囲を広げるのと等しい効果を得ることができます。

 

そして包括遺贈による受遺者となった方は、それが相続人以外の第三者、友人・知人の1人であったとしても、遺産分割協議に参加する権限を得ます。

そこで受遺者以外の人物で勝手に遺産分割を進めることはできませんし、手続を進められたとしても受遺者は無効を主張することができます。

相続財産の変動にも強い

財産を指定する特定遺贈では、遺言書を作成してから当該財産が消失してしまうと、その遺言が意味をなさなくなってしまいます。

例えば「建物〇〇を孫に遺贈する」と遺言書に記載した後、当該建物を売却してしまっていると、孫は遺贈を受けることができません。

「代わりに土地をもらう」などと異なる財産をもらい受けることも認められません。

 

一方の包括遺贈では財産の内容ではなく取得割合が重要であるため、ある特定の財産がなくなってしまっても別の財産を取得することで遺贈を受けることができます。遺言書の作成からいろんな事情があって大きく財産状況が変動しても、受遺者に何らかの財産を受け取ってもらうことができるのです。

負債も取得する

遺言者、受遺者ともに注意しておきたいのが「包括遺贈により負債も取得する」という点です。

 

割合で取得する以上、遺産に借金などの負債が含まれているとその分も指定の割合に従って取得する必要があります。

遺贈を拒否することもできますが、都合良く負債だけを拒否することはできません。

 

もし残った資産より負債の方が大きい場合は遺贈により受遺者は損をしてしまいますので、よく遺産の調査をしておく必要があるでしょう。逆に特定遺贈だとこのような心配はありません。借金を与える旨の遺贈がなされていない限り、全体として負債の方が多くても受遺者がそれを引き継ぐ必要はないのです。

遺留分の侵害に注意

包括遺贈に限りませんが、遺贈により遺産全体のうち大きな割合を取得するときは、一定の人物から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があることに留意しましょう。

 

遺留分侵害額請求とは、法律に基づき最低限留保されている遺産(遺留分)を確保するための請求のことです。もし遺産総額が1億円であって、相続人の1人に2,500万円の遺留分が認められるとしましょう。このとき「遺産総額の8割を遺贈する」との遺言に従い受遺者が8,000万円を取得していると、遺留分権利者から侵害分の500万円について請求されることがあるのです。

 

遺留分全体の額は、最大で、遺産総額の1/2です。そこで、包括遺贈により1/2を超える割合を相続人以外に与える場合、遺留分侵害額請求を受遺者が受けることがあります。遺言者は遺留分にも配慮しながら遺言内容を検討しましょう。

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    平成10年  早稲田大学 法学部卒業

    平成12年  司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務

    平成14年  司法書士登録

    平成16年  簡裁代理関係業務認定

    平成22年  いつき司法書士事務所開業

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