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遺言書作成の流れと必要書類、作成費用について

法的効力を持つ遺言書を作成するためには、法令に則って作成する必要があります。作成方法に対応して遺言書にも種類があり、それぞれ必要な書類や費用も異なります。

 

遺言書というものを知っていても、正しい作成の方法を把握していない方がほとんどです。そこで当記事では代表的な遺言書(自筆証書遺言と公正証書遺言)について、具体的な作成の方法、作成の流れ、必要書類と作成費用について解説していきます。

遺言書作成の流れ

遺言書の清書を始める前に、遺言内容を考える必要があります。そして財産の受け取り手や遺産分割の方法などを指定する場合、前もって法定相続人や財産の内容等を把握しておくことが大事です。

財産や相続人などの下調べ

遺贈(遺言書を使って財産を譲渡すること。)をするには、遺言者自身が持つ財産の内容を把握しておく必要があります。財産の内容を整理し、その評価額についても調査しておくと良いでしょう。

 

また、法定相続人とそれぞれの法定相続分についても調べておきましょう。遺言書を作成しなくても法定相続人は遺産を取得する権利が与えられます。無理に遺言書を作成する必要がない可能性もあります。

 

とはいえ法定相続分に従った相続ではご自身の納得いく遺産分割にならない可能性もありますので、単に「財産をあげたい」というだけでなく、割合や取得の方法などを細かく指定するのであれば遺言書作成の意義はあるでしょう。

 

これに対し、財産をあげようとする相手方が法定相続人でない場合は、相続により遺産を取得することができませんので、遺言書を作成する必要があります。
なお、このときは遺留分に注意が必要です。一定の相続人(配偶者、子ども、直系尊属)については遺産の一定割合を確保する権利が与えられています。これを遺留分と呼び、遺贈により遺留分の侵害が起こったときは、遺留分権利者からの請求を受けて遺贈分が回収されることもあります。

 

遺留分の侵害は違法行為ではありませんが、遺留分権利者との間でトラブルになるおそれがあります。遺留分を侵害しない程度で遺贈をするか、遺留分権利者とも話し合い、納得を得た上で遺言書を作成するなどの対応を取ると良いでしょう。

遺言書の作成方法の検討

遺言書には、作成方法に応じていくつかの種類があります。

 

代表例が、①自筆証書遺言と②公正証書遺言です。

 

<自筆証書遺言>

自筆証書遺言は、全文を自書により作成する遺言書で、遺言者が 1人で好きなタイミングで作成することができます。手軽で費用もほとんど必要ありませんが、法律の知識がないと適切に作成できないリスクがあります。そのため自筆証書遺言であっても、司法書士などの法律に強い専門家のサポートを受けながら作成を進めるのが一般的です。

 

<公正証書遺言>

公正証書遺言は、公証役場で作成する、公文書としての性格を持つ遺言書のことです。手間や費用はかかりますが、公証人が文書の作成を行いますし、証人の立ち合いもあるため、作成方式の不備は起こりにくいという利点を持ちます。

 

どの種類にしても、遺言書としての効力に違いはありません。適切に作成できていれば同等に遺贈等を実行することが可能です。ただ、作成過程の手間や費用、保管上のリスク、などに違いがあります。これらを総合的に考慮して、作成方法を検討しましょう。

遺言書の作成

遺言書の種類が決まれば、遺言書の作成を始めましょう。

 

作成方法の詳細については後述します。

 

どの種類を選択した場合でも遺言者が1人で悩む必要はありません。専門家との相談を通して遺言内容を定めていくことをおすすめします。

作成した遺言書の保管

遺言書の作成後、すぐにその効力が生じるわけではありません。遺言書が機能するのは遺言者が亡くなってからですので、相続が開始されるまで大事に保管しないといけません。その期間は、数年間かもしれませんし、数十年間にまで及ぶかもしれません。その間、改ざんや紛失等の危険から守り続ける必要があります。

 

自筆証書遺言に関しては、保管場所に指定はありません。遺言者が自由に保管することができます。自宅で保管をする場合は、金庫などに厳重に保管しておく必要があるでしょう。ただし、遺言書の存在が死後明らかにならず、遺言内容に沿った遺産分割が実行されないリスクも考慮しなければいけません。
保管に不安がある場合は、法務局が運用している自筆証書遺言保管制度を利用すると良いです。費用はかかりますが、法務局で原本を安全に保管してもらうことができます。

 

一方の公正証書遺言は、遺言者の自由に保管することはできません。原本は公証役場で保管されます。そのため、改ざん、紛失といったリスクを不安視する必要は基本的にありません。

 

自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言について、作成方法を説明します。

 

民法には、次の規定が置かれています。

 

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

引用: e-Gov法令検索 民法第968条第1項

 

自筆証書遺言では全文の自書が条件とされています。そのためパソコン等を使って文書を作成し、プリントアウトしたものを遺言書とすることはできません。用紙とペンを準備し、手書きで作成を進めることが求められます。遺言内容以外の、「遺言者の氏名」や「遺言書作成の日付」についても自書にて記載する必要があります。その上で、押印をします。

 

なお、遺言書に沿える「財産目録については手書きでなくても良い」というルールになっています。財産を一覧にした文書をすべて手書きで書いていくのは大変な作業ですので、パソコン等を使った作成も認められています。

必要書類と作成費用

自筆証書遺言の場合、ペンと用紙、封筒、印鑑があれば作成自体は可能です。

 

これらの準備物に指定はなく、どんな紙を使って作成してもかまいません。ただしすぐに破れたり劣化したり、文字が消えてしまったりしてはいけません。しっかりした質の用紙や封筒を準備し、ペンについても鉛筆やシャーペンなどの簡単に消せてしまうものは避けるべきです。

 

司法書士などに遺言書作成のサポートをしてもらう場合は、本人確認や受遺者の確認が取れる、次の書類を求められることが多いです。

 

  • 印鑑登録証明書(発効後3ヶ月以内のもの)
  • 相続人との続柄が記載されている戸籍謄本
  • 相続人以外への遺贈をするときは、当該人物の住民票

 

また、遺贈対象となる財産の内容に応じて次のような書類が必要になることもあります。

遺贈対象となる財産

必要書類

不動産

・登記簿謄本

・固定資産評価証明書、または固定資産税の納税通知書

預貯金

・通帳の写し

・残高証明書

動産

・鑑定書(貴金属や美術品、骨董品などの場合)

自動車

・車検証

・査定書

債権

・契約書等の債権を証する書類

 

 

自筆証書遺言の作成費用についてですが、上述の通り、封筒やペン、用紙などがあれば作成自体は可能であるため、数百円の負担で済ませられます。しかしながら、保管を外部に依頼する場合や、専門家に相談・依頼する際にも費用の負担は発生します。そこで、自筆証書遺言に係る費用の相場を次のようにまとめることができます。

 

  • 封筒、ペン、用紙の購入費:数百円
  • 必要書類の取得費用:1通あたり数百円
  • 専門家の依頼費用:数万円~ 30万円(依頼する範囲、作業量、依頼先となる専門家により金額は異なる)
  • 遺言書の保管費用
    • 法務局での保管: 3,900
    • 銀行等の貸金庫: 1年あたり数千~数万円

公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言を作成するには、まず、公証役場にアポを取らなければなりません。そして公証人と連絡を取り合い、遺言内容を定め、予約した日時に作成を行います。

 

公正証書遺言の作成で特徴的なのは、「証人が 2人以上必要」という点にあります。また、遺言書に執筆するのは遺言者自身ではありません。遺言者は遺言内容を公証人に口で伝え、公証人が執筆します。その後記載した内容を遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させてチェックします。

 

内容に問題がないことを確認した遺言者および証人は、正確であることを承認して各々署名押印します。さらに公証人が、適式に遺言書の作成が実行されたことを付記。署名押印します。こうして公正証書遺言は作成されます。

 

なお、作成期日までに、公証人とは数回ほど打ち合わせを行います。

必要書類と作成費用

公正証書遺言を作成するには、「本人確認書類」が必要です。専門家に依頼して代理人を立てるときや、遺言内容、財産の内容に応じて別途必要になる書類もあります。

 

遺言者本人の確認書類

※次のいずれかを準備

・印鑑証明書

・実印

・運転免許証

・認印

・マイナンバーカード

・認印

・写真付きの住民基本台帳カード

・認印

・パスポート

・身体障害者手帳

・在留カードと認印

代理人に依頼する場合
の必要書類

・委任状

・本人の印鑑証明書

・代理人の確認資料

その他の必要書類

・戸籍謄本

※遺言者と相続人との関係が示せるもの

・受遺者の住民票

・証人の確認資料

※住所や職業、氏名、生年月日が示せるもの

・固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書

・登記簿謄本

※不動産が遺言執行に関与する場合

 

公正証書遺言の作成費用として、必要書類の取得にそれぞれ数百円ほどかかるのは自筆証書遺言とも共通します。専門家に相談・依頼するときの費用も、依頼内容に応じて数万円から 30万円ほどかかります。

 

これに加えて、「公証人手数料」が発生します。公証人手数料は、遺言の目的となる財産の価額に応じて、下表の内容に従い定まります。

 

遺言目的となる財産の価額

手数料

100万円以下

5,000

200万円以下

7,000

500万円以下

11,000

1,000万円以下

17,000

3,000万円以下

23,000

5,000万円以下

29,000

1億円以下

43,000

3億円以下

43,000円+(超過額 5,000万円までごとに 13,000円)

10億円以下

95,000円+(超過額 5,000万円までごとに 11,000円)

10億円を超える

249,000円+(超過額 5,000万円までごとに 8,000円)

参照: e-Gov法令検索 公証人手数料令第 9条別表

 

遺言者の財産全体を基準に考えるのではなく、相続や遺贈を受ける人ごとに価額を算出し、上表にあてはめます。その後各人の手数料額を合計し、公正証書遺言全体の作成手数料を算出します。

※全体の財産が 1億円以下である場合、算出された手数料額に 11,000円が加算される。

 

遺言書作成の流れ、自筆証書遺言と公正証書遺言の作成方法と必要書類、費用について簡単にまとめました。「もっと詳細を知りたい」「自分 1人で作成するのは不安」という場合は、相続に強い専門家に相談することをおすすめします。

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  • 経歴

    平成10年  早稲田大学 法学部卒業

    平成12年  司法書士試験合格、三鷹市の司法書士事務所に勤務

    平成14年  司法書士登録

    平成16年  簡裁代理関係業務認定

    平成22年  いつき司法書士事務所開業

事務所概要

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